2014年07月27日

介護民俗学

「(インタビュー)民俗学からみる介護 介護施設で「聞き書き」する職員・六車由実さん」朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/DA3S11261260.html

私が特別擁護老人ホームへ実習に行っていた時のことを思い出しました。

ある女性は、大阪近郊が辺り一面泥田だった頃、胸まで浸かって農作業していた様子などを語って下さいました。また、嫁ぎ先の今はベッドタウンになっている山あいの村では、隣近所の人たちと示し合わせて近くの里山へ薪を取りに行ったそうです。山の持ち主に見つからないよう持ち主の動きに細心の注意を払い、隙をついて山に入るのだとか。エラいところに嫁いで来たなぁと思った、と仰っていました。(入会地(共有財産)だった里山が、資本主義の浸透で人の持ち物になってしまったものの、生活のために薪は欠かせなかったという背景があったと思われます。)

戦前に某国の領事館で働いていた方から聞いた、当時の日本とその国の関係を映した微妙な人間関係。

京染悉皆業を営んでいた方から聞いたその一つ一つの作業工程。

昭和10年代の駆け落ち逃避行劇。


高齢者施設はまさに生きた歴史民俗博物館だと思ったものです。

認知症の方は繰り返し同じことを話されると言われるし、実際そういうことも多いのですが、興味を持ってお尋ねしていくうちに、さらに詳しいことや、その場で思い出したエピソードを話し始められることは度々ありました。

家に帰ってからその当時のその地域やその業界の状況などの一般的な情報をネットで補って、翌日さらに踏み込んだ質問をすると、またさらに興味深い話で応じて下さったりと。

もっとも、私の聞き取りの技量は、この記事の人の足元にも及んでいないと思われますが。


3大介護に追われる現場の介護職の方々が、これを実践するには余りにも余裕が無さ過ぎるのですが、「聞く」という行為に新たなスタンスが加わることは大いに意味があることと思います。

記事にもあるように、「人生の最後にどのような介護を受けたいのか」を考える必要があります。また、それを実現する社会の在り方を考える必要があります。


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